日本粘土学会 会長からのごあいさつ

山口大学大学院 創成科学研究科 理学系学域 川俣 純

2022年9月7日の総会にて、本会の2023・2024年度の会長を拝命いたしました。本会、そして粘土科学研究の発展に、微力ながらも尽くしていきたいと考えておりますので、皆様よろしくお願い申し上げます。

本会は、1958年創立の粘土研究会が発展する形で、1963年に創立された歴史ある学会です。粘土の基礎研究から応用までを総合的に扱う日本で唯一の学術団体で、2015年には一般社団法人となりました。欧文誌「Clay Science」、和文誌「粘土科学」を定期的に刊行しているのに加え、粘土研究のバイブルとも言える「粘土ハンドブック」は第3版まで刊を重ねています。国際粘土研究機構(AIPEA)にも加盟しており、国際粘土会議(ICC)のホストを2回務めています。過去にアジアでICCのホストを任されたのは当会だけで、アジアの粘土研究の中核を担っています。

粘土鉱物は千の用途を持つ素材と言われており、資源・材料、化学・物理の分野で利用されています。古くからは陶磁器、煉瓦、瓦、セメントなどの製造原料として、また石鹸、環境浄化物質などとしても利用されてきました。最近は、医薬品や化粧品の成分としての用途も拡がってきています。一方で粘土は、私たちの住む地球の表層(地殻)に広く分布するとても身近な物質で、地球科学はもちろんのこと、土壌・肥料・農林業、建設・土木といった幅広い分野と関連しています。近年、ダイバーシティ社会の実現が声高に叫ばれていますが、日本粘土学会では研究分野のダイバーシティが60年以上前から脈々と受け継がれています。

近年は、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)や酸化物ナノシート、グラフェン類などを研究対象とする会員も増えてきました。学科・職場内ではなかなか出会えない、多様なバックグラウンドを持った研究者と容易に、かつフランクに繋がり合えることが粘土学会の魅力です。会員の皆様には粘土学会の魅力をご自身の研究や事業に存分に活用していただきたいと思っております。また、未だ会員になられていない方のご入会を、心よりお待ち申し上げております。